
不正改造車撲滅運動

2017年8月、 例年通り、 国道交通省による 不正改造車の排除運動 が実施されました。
![]() 基準不適合とされつつ、 その場で問題が改善されなかった(できなかった)車両は307台、 内バイクが44台。 ![]() その場で改善できた車両を含めれば、 その数は、 より増加するでしょう。 即ち、 バイクの不正改造(整備不良)率は、 バイク以外の車両に比べ極めて多く、 少なくとも6〜7台に1台のバイクは、 不正改造等、 整備不良の状態で公道を走行している事が発覚したのです。 これは大変に憂慮すべき割合と云えます。 |
なぜ、 ここまでバイクに於ける不正改造や整備不良の割合が大きくなってしまったのか。
その原因はライダーの、 改造に対する絶対的な知識不足とモラルの欠如にあると我々は考えています。
北米やヨーロッパにも日本と同じ様にバイク文化が根付き、 ファンが多く、 弊会の様なツーリングクラブも沢山存在しています。
それに比例し、 バイクに関する情報を扱う冊子も数多く刊行され、 あらゆるライダーが思い思いのバイクライフを楽しんでいます。
しかしながら海外のバイク冊子の内容には、 日本のそれと決定的に異なる部分が存在します。
バイクの ”改造” や ”カスタム” を取り上げた記事が圧倒的に少ないのです。
ツーリングに最適な、 美しい景色が見られるスポットや、 新型バイクのインプレッション、 オイルの交換方法等を解説する記事は存在しても、 社外マフラー(チャンバー)のレビューや、 いかに速く走るか等を特集した記事は目にしません(例外は存在します)。
バイクレースを扱う冊子では、 そうした記事が掲載される場合もありますが、 一般的なバイク冊子の記事として取り上げられる例は稀です。
それに対し日本のバイク冊子は 社外マフラー(チャンバー)のサウンドや性能、 コーナリングのテクニック、 トップスピードを上げる方法等、 違法か否かによらず、 あらゆる改造の記事が掲載され、 一般のバイクファンを対象とした冊子にもかかわらず、 レースマシンの構造が詳細に解説される等、 速く走る方法を特集した例が少なくありません。
他国よりも厳しい保安基準や交通法が施行されているにもかかわらずです。
バイクのパーツメーカーやショップも同様です。
レース用品の名目で、 適法性の不確かなマフラー(チャンバー)等、 様々なパーツを製造するメーカーと販売店が溢れています。
そうした影響からかバイクファンの間では、 改造ありきの文化が根付いているのです。
JMCAに認定された製品であれば問題ありませんが、 当該認定を受けていない、 独自の測定方法で騒音値を計測したマフラーやチャンバーを喜んで買う消費者が後を絶ちません。
JMCA認定製品であれ、 サイレンサーが劣化したり、 マフラー(チャンバー)の交換に加えエアクリーナー等にまで手が加えられていれば規制騒音値を簡単に上回り、 法令違反となる可能性が高い点について注意喚起しているメーカーさえ稀有です。
自身のバイクが不正改造車であると気づかないまま乗っているライダーも少なくないでしょう。
その結果、 公道を走行する、 最低6〜7台に1台のバイクが違法車両と云う異常事態を招いているのです。
バイクは見た目や性能が全て。
こと日本人のライダーには、 この考えに共感する者が少なくないと思われます。
海外には、 低排気量バイクであれ、 ツーリングを楽しむ団体が山のように存在しますが、 そうした団体や、 低排気量バイクに乗る者を馬鹿にする様な風潮はありません。
原付も同じバイクの括りとして楽しむ愛好者やクラブが非常に多いのです。
それに対し、 日本は如何でしょう。
星の数ほど存在するツーリングクラブの中で、 どれだけ原付を扱うクラブが存在するでしょうか。
低排気量故の走破性能や、 原付を取り巻く法令等を取り上げ、 なんやかやと屁理屈を捏ねて自動二輪免許の取得を薦めたり、 原付を馬鹿にするライダーは居ないでしょうか。
そうした大人気無いライダーが蔓延る日本のバイク界は、 正にカオスであると云えます。
皆様には排気量や見た目、 スピードに拘らず、 純粋にバイクを楽しんで頂きたい。
そしてバイクに手を加える際は、 誰の目にも紳士的に映る改造を心がけて頂きたいと願います。
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マフラー(チャンバー)を交換し、 音を煩くしたバイクのみが違法ではありません。
道路運送車両法で定められた保安基準のみを遵守すれば合法でもありません。
これらを勘違い、 或いは曲解されている方も多い為、 バイクを改造する際、 見落としやすい点について一例を挙げます。
第1種原動機付自転車には2.5m×1.3m×2.0mの寸法規定が存在します。
これは道路運送車両法で明確に定められた規定で、 この大きさを超過する第1種原動機付自転車は製造できません。
バイクメーカーは、 当然、 この規定を遵守してバイクを製造します。
そして製造したバイクの寸法や排気量等(詳細なエンジン形式、 馬力他は含まず)は国土交通省に届けられ、 販売認可を受ける事で車台番号が発行されます(車台番号はメーカーが勝手に付与する番号ではありません)。
また、 当該車台番号は、 製造者(メーカー)のみ刻印できると規定されています。
即ち、 車台番号の発行時に申請された車両の寸法と実際の車両の寸法が異なる場合、 その車台番号は偽りとなります。
役所は、 原動機付自転車の標識発行要綱に則り、 当該車台番号の信頼性を以て標識(ナンバープレート)を発行するのですから、 その番号が偽りとなれば、 偽計を以て標識の発行を受ける事になります。
当然、 そうした標識は無効であり、 標識の発行を受けてから寸法を変更した車両で公道を走行した場合も、 装着された標識に相応しくない車両となる為、 これに同じです。
自動二輪車の場合、 こうした変更を施した場合であれ、 然るべき手続きを経れば合法的に公道を走行できますが、 車両検査義務の無い原動機付自転車には同様の制度が存在せず、 変更を加えた時点で公道を走行してはならない車両となります。
但し、 排気量の増大による車両区分の変更や、 ミニカーとして登録する場合等、 その旨が役所に届けられる(申請用紙に項目がある)改造に関しては例外となります。
正規メーカー直売店は無論、 レッドバロンを始めとする大手バイクショップが、 CDIの交換は行ってもロンホイ(ロング・ホイール)化やロンスイ(ロング・スイングアーム)化等の改造を請け負わない背景には、 こうした理由があります。
車両の整備に関し、 一定のスキルを得た整備士であれ、 道路運送車両法のみを学んだ者が多く、 これに気づかないまま犯罪の片棒を担いでしまう場合がある為、 注意が必要です。
この他、 マフラー(チャンバー)の交換自体は合法ですが、 年式毎に定められた規定騒音値を上回ると違法となります。
前項でも少し触れましたが、 合法を謳う市販のマフラー(チャンバー)であれ、 最大限の性能を引き出すべく騒音規制値ギリギリで設計されている製品が多い為、 エアクリーナー等も社外品に交換した上で当該製品を用いると、 メーカーが公証する騒音値を簡単に上回り、 違法となる可能性が極めて高くなります。
如何なる場合も潔白を訴えたい場合は、 現車両の騒音値が客観的に証明できる この様な書類 を用意しておくと良いでしょう。

これは、 ホンダ製スクーターの後部を撮影した写真ですが、 当該バイクは不正改造されています。
多くの方は、 標識(ナンバープレート)が跳ね上がっている点を指摘するでしょう。
ところが、 それだけではありません。
どの部分が問題か、 お分かり頂けますでしょうか。
まず、 ストップランプのレンズが透明化されているにもかかわらず、 内部のバルブ(電球)が電球色です。
分解せずともレンズが透明ですので、 容易に分かります。
この場合、 赤色のバルブを装着せねばなりません。
ウインカーには橙色の電球が装着されている為、 その部分は適法です。
次に赤色反射板の不備です。
第1種原動機付自転車には、 後部に然るべき大きさの赤色反射板を装着する義務があります。
多くの場合、 ストップランプを構成するレンズの一部がリフレクターの要件を満たす様に設計されているのですが、 このバイクはテールレンズをクリアーレンズに交換しており、 それが失われています。
即ち、 赤色反射板を別途設ける必要があるにもかかわらず、 このバイクには装着されていません。
従って標識の跳ね上げを含めると、 後部だけで3箇所もの不正改造が存在する事になります。
クリアーテールレンズは条件によらず合法、 ナンバープレートの跳ね上げも直ちに戻せる状態なら合法と云った、 言葉足らずで都合の良い情報だけを頼りに手を加えた結果、 救い難いバイクに成り下がってしまった例として特に紹介しておきます。
なお、 標識の角度を可変できる様にするパーツは、 現在、 販売が禁止されています(地面に対し、 概ね40°以上の角度が付いていなければ装着自体に違法性はありません)。
こうしたバイクは、 たとえ所有者が暴走族でなくとも、 法規上、 暴走族のバイクと同様に扱われます。
皆さんも、 重々ご注意下さい。
第1種原動機付自転車に関わる主な保安基準については こちらのページに掲載していますので、 ご参考になさって下さい。